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耳鼻科一般の病気

◆ スキューバダイビングが耳に与える影響 ◆


スキューバダイビングの時に注意することは?
 

< ダイビングに際しての注意 >

 

*ダイビングをこれから始める人、久しぶりにやる人へ
次にあてはまる人は、まず耳鼻科での診察を受けましょう

 

1.耳鼻科疾患(慢性中耳炎・滲出性中耳炎・アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎など)の既往がある

 ・ 小さい頃、耳鼻科に通っていた記憶がある人も

2.耳鼻科疾患の有無は不明だが、耳の調子がよくない

 ・ 聞こえにくい
 ・ 塞がった感じがする
 ・ よく痒くなる 
 ・ 左右の耳の感じが何となく違う
 ・ 高い所に行った時・飛行機に乗った時などに耳が"ポーン"となる、もしくは痛くなったことがある

3.耳鼻科疾患の有無は不明だが、鼻の調子がよくない

 ・ 鼻の通りが悪い

 ・ 口を閉じて鼻だけで3分以上呼吸ができない

 ・ 片側ずつ呼吸してみた際に、左右で通り方が違う

 ・ 鼻水・くしゃみなどがよく出る
 ・ 鼻が奥にたまってかみきれない/鼻がのどに下りる
 ・ 鼻をすする癖がある


*ダイビングにのぞむ際に必要な健康上の注意

 

1.体調の悪い時には潜らない

 ・ 風邪をひいている
 ・ 寝不足だ
 ・ 疲れがたまっている

2.ダイビングの前夜・当日は飲酒しない

 ・ 過度の飲酒は二日酔いの原因になります
 ・ 二日酔いでなくても、飲酒の影響が残ります

3.エアコンをつけたまま寝ない

 ・ 窓を開けたままもダメ

・・ ダイビング中の中耳腔内の気圧 ・・

 

*ダイビングに伴うトラブル   

 潜水降下(潜降)の際には、体に高い外圧(絶対圧=水圧+気圧)がかかり、体内に存在する肺・中耳・副鼻腔などの空洞の空気を圧縮させます。それが原因で、外側から空洞へと力の加わる圧外傷が発生しうるのです。一方、浮上の際には、これらの空気は膨張するため、潜降の時とは逆に空洞から外側へと力の加わる圧外傷が発生しうるのです。 最も頻繁に生じる圧外傷は、中耳の気圧の調節不全が原因で起こる鼓膜損傷と内耳障害です。これらの圧外傷を避けるためには、中耳と外界(外耳道側)の圧を常に同等にしておく必要があります。

 

*耳抜き・・・バルサルバ手技

 水中では外耳道側に加わる外界の圧は、水深10mについて1気圧づつ増加するので、潜降の際には頻繁に中耳腔内の気圧を調節しなければなりません。具体的には以下のような状態になるのです。1)外界(外耳道側)から圧がかかる2)鼓膜が中耳側に押される3)中耳腔(鼓室)内の圧が高くなるそこで、鼓室内の高くなった圧を耳管(鼓室と鼻をつないでいる管)を通じて鼻の方へ抜く動作が必要になります(耳の解剖図参照)。この時にダイバーは顎を動かしたり、唾を飲んだり、鼻をつまんでイキむ手技(バルサルバ手技)をとるのです。これらの動作全体を指して「耳抜き」といいます。

 

< 潜降時 >

 鼓膜に水圧(白抜き矢印)がかかるため、鼓室(中耳腔)内の圧が高くなる。鼓室内の高くなった圧を耳管を介して鼻の方へ抜く必要がある(バルサルバ手技)。

*耳抜きの逆

 浮上に際しては、中耳腔内の気圧が高くなっているので、空気を抜いて圧を下げなければなりません。今度は、潜降の時とは逆にこのような状態になります。1)浮上によって鼓室内の空気が膨張する2)中耳(鼓室)内の圧が高くなる3)鼓膜が外耳道側に押されるそこで、潜降の時と同じように、鼓室内の高くなった圧を耳管を通じて鼻の方へ抜く動作が必要になります。そのために唾を飲み込む動作を行い圧の調節をします。ただし、浮上の際には、潜降する時のバルサルバ手技のように強制的に圧の調節をすることはできません。

 

< 浮上時 >

 鼓室(中耳腔)内の空気が膨張するため、鼓室内の圧が高くなる。

*潜降時のトラブル/耳抜き困難による障害

 耳抜きが全くできないままで潜降すると、水圧によって鼓膜が中耳腔の方へ強く押されて耳痛を生じます。痛みを我慢してさらに深く潜降すると、水深3mで鼓膜は水圧に耐えられず穿孔(破れて穴があく)または裂傷(傷がつく)を生じます。鼓膜が損傷を受けると、海水などの体温よりも温度の低い水が中耳腔に入るため、内耳が刺激されて温度眼振(めまい)が起こります。

耳抜きがうまくできないと、鼓膜の穿孔・裂傷を起こさなくても、潜水性中耳炎を起こすことが多いです。

 

・・・・ 潜水性中耳炎とは ・・・・

 

 通常、潜降によって鼓膜外側に水圧がかかった時は、耳抜きをして中耳腔に空気を入れ内外の圧力の均衡を図ります。 ところが、耳抜きができない場合、中耳腔内に体液が染み出ることによって圧力の均衡を図ります。 耳抜きをして入れた中耳腔内の空気は浮上とともに抜けてしまうのですが、体液はゆっくりと体に吸収されるため、しばらくの間、難聴・耳閉感(耳が塞がったような不快な状態)が続きます。 耳鼻科での治療が必要です。

 

*浮上時のトラブル/耳抜きの逆が困難な場合

 浮上時の耳抜きの逆の動作が困難である現象は、原則として潜降時に耳抜きがうまくできていない場合に生ずるのです。繰り返し行われた無理な耳抜きの動作が、耳管の粘膜に充血・浮腫(腫れた状態)などの障害を起こし、耳管の機能不全を増悪させます。その結果、中耳腔内の高い気圧の空気が抜けずに鼓膜を外方へと圧迫し、それによる耳痛を来たします。同時に、内耳窓を圧迫することにより内耳障害が起こります。内耳障害の代表的な症状はめまいであり、圧平衡が正常に戻らない限り症状が持続します。この状態をリバース・ブロックと呼びます。

 めまいは潜水中に生じる最も危険なもので、ダイバーは水中でバランスを失い、方向感覚を喪失します。その結果、浮上しようにも水面の方向がわからなくなり、さらに嘔気が強くなり、嘔吐することもあります。このような状況下では、初心者でなくてもパニックにおちいり易く、あわてて浮上して潜水病(減圧症)になることもあります。

 

・・・ 潜水病(減圧症)とは ・・・・

 

 水中という高圧の環境下での呼吸により、空気中に含まれる窒素が体内に過剰に溶け込むことが原因となり起きる症状です。

浮上時に圧力が下がると、組織から血液中に窒素が戻り、肺から放出されます。このとき、多量の窒素がとけ込んでいたり、急激に圧力が下がると窒素は血管の中で気泡化してしまい、気泡が大きくて血管を詰まらせると減圧症を発症します。ダイブテーブルやダイビングコンピューターで十分な無減圧時間内であり、ゆっくり浮上し、安全停止をすれば滅多に起きません。

 

 減圧症の症状は窒素の気泡が出来た場所ごとに異なり、筋肉や関節は針で刺したような痛み、肺は呼吸困難やチアノーゼ、心臓は胸痛、脳脊髄は麻痺、呼吸困難や停止、意識障害など、内耳は激しいめまい、難聴、耳鳴りです。内耳型以外は死亡することもあります。治療は発症直後の純酸素吸入が特に有効で、必要があれば出来るだけ早く再圧チャンバーに入ることが必要です。

 減圧症のなりやすさはかなり個人差や体調といった要因が大きく、簡単には判断できませんが、リスクとしていくつか知られているものがあります。急浮上、30mを越える深く長い潜水、下痢や寝不足などの体調不良、潜水前後のアルコールや激しい運動、寒冷、肥満、潜水後の熱いシャワーや入浴、潜水後24時間以内の飛行機搭乗や山越えなどです。これらの要因を控え、余裕を持った控えめの潜水を心がけることです。

*耳抜きが困難になる条件
 
 耳抜きが困難になる一番の原因は、いうまでもなく耳管の機能障害ですが、"ダイバーの3人に1人が常に耳抜きが困難である"という分析結果もあるほどです。これらの耳抜きがうまくできないダイバーに、基礎疾患としてアレルギー性鼻炎を持っている割合が高いこともわかっています。

 耳管機能を悪化させる主な原因としては以下のものがあげられます。

1)耳鼻科疾患 ・・・・・・ 慢性中耳炎・滲出性中耳炎・アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎など

2)身体の状態 ・・・・・・ 風邪などの急性炎症性疾患、寝不足、飲酒、不適切な薬剤の使用など

3)その他 ・・・・・・ 複数本の潜水など

 耳管機能不全に関連すると考えられる耳鼻科領域の疾患に対しては、日頃から積極的な治療を優先すべきです。

 


・・・・ ダイビングと薬 ・・・・ 

 本来は、基礎疾患が全くない健康な状態の方のみがダイビングに適している、と言えます。もちろん、心肺機能に異常がある方はダイビングを禁止すべきです。しかし、基礎疾患を有している場合で、薬物を普段から使用している場合でも、その疾患が十分にコントロールできていればダイビングは可能です。

 

*ダイビングに適さない薬

 

 一般的に、ダイビング直前に中枢神経系(脳)に直接作用する薬を服用することは危険を招く確率を高くします。典型的な例は精神安定剤や風邪薬であり、水中での判断力低下を起こし、アクシデントにつながることがあります。アレルギー性疾患に用いる抗アレルギー薬にも副作用として眠気があり、服用にあたっては、医師の指導を必ず受けて下さい。

 

*ダイビングにも適した薬

 

 ダイビングは危険なスポーツなので、安易な投薬は事故を招くきっかけとなりかねません。薬を使用する時は、医師の指導を受ける必要があります。普段から継続的に薬を服用している人は、ダイビングの前に医師に安全かどうかの確認を取りましょう。

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