
睡眠の乱れと経済損失の関係
Q1.睡眠の問題は「経済損失」につながるのですか?
A.はい、非常に大きな経済損失につながることが分かっています。
睡眠不足や睡眠の質の低下は、集中力・判断力・作業効率を低下させます。その結果、仕事や学業のパフォーマンスが落ち、個人だけでなく社会全体としても大きな経済的損失が生じます。睡眠の問題は「体調不良」ではなく、「生産性を下げる要因」として捉える必要があります。
Q2.どのような形で経済損失が起こるのですか?
A.主に「欠勤」と「出勤していても効率が落ちること」です。
睡眠不足や不規則な睡眠により、
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体調不良や強い眠気で仕事・学校を休む(欠勤)
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出勤・登校しても集中できず、ミスや作業効率低下が起こる(プレゼンティーイズム) といった状態が生じます。特にプレゼンティーイズムは自覚されにくく、長期間にわたって損失が蓄積しやすい点が問題です。
Q3.「睡眠時間」だけ気をつければ十分ですか?
A.いいえ、「質」や「生活リズム」も非常に重要です。
大規模研究では、睡眠時間が短すぎても長すぎても生産性が低下することが示されています。また、
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寝つきが悪い
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夜中に何度も目が覚める
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平日と休日で睡眠時間が大きく異なる(社会的時差ぼけ) といった睡眠の乱れも、仕事のパフォーマンス低下と強く関連します。
Q4.どのような睡眠タイプが特に問題になりますか?
A.「不眠傾向型」と「社会的時差ぼけ型」です。
スマートフォン睡眠アプリを用いた約8万人規模の解析では、睡眠パターンは複数のタイプに分類されました。その中でも、
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寝つきが悪く途中で目が覚めやすい「不眠傾向型」
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平日と休日で生活リズムが大きくずれる「社会的時差ぼけ型」 では、労働生産性の低下が特に顕著でした。これは年齢や性別に関係なく認められています。
Q5.睡眠を整えることで、経済損失は減らせますか?
A.はい、改善が期待できます。
生活リズムの是正、睡眠環境の改善、睡眠障害(不眠症・睡眠時無呼吸など)の適切な治療により、
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日中の眠気や集中力低下の改善
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作業ミスや効率低下の減少 が報告されています。医療や生活改善にかかるコストよりも、「睡眠を放置することによる損失」の方が大きい場合が少なくありません。
合わせて読みたい
→ 睡眠不足の弊害
院長コメント
睡眠の問題は「眠い」「疲れが取れない」で終わる話ではありません。集中力や判断力の低下は、仕事や学業の質に直結します。特に平日と休日の生活リズムが乱れている方は、自分では気づかないまま生産性を落としている可能性があります。睡眠は、健康を守るだけでなく、日常のパフォーマンスを支える基盤です。
医学的根拠
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睡眠不足および睡眠の質低下は、欠勤よりもプレゼンティーイズムによる経済損失が大きいと報告されています。
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睡眠時間は短すぎても長すぎても、労働生産性や健康指標が悪化します(U字型関係)。
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社会的時差ぼけ(平日と休日の睡眠リズムのずれ)は、集中力・作業効率低下と強く関連します。
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大規模データ解析により、睡眠改善介入が生産性向上につながる可能性が示唆されています。
参考文献
Yanagisawa M, et al.
Association of sleep patterns assessed by a smartphone application with work productivity loss among Japanese employees. npj Digital Medicine. 2025.
Hafner M, et al.
Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep. RAND Europe. 2016.
Kessler RC, et al.
Insomnia and the performance of US workers. Sleep. 2011.

