
鼻呼吸と免疫力 ― 冬にこそ知っておきたい理由
◆ 院長コメント
冬は風邪やインフルエンザの患者さんがぐっと増えます。
その大きな理由の一つが 「鼻で呼吸できているかどうか」 です。
鼻は、
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加湿
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加温
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異物フィルター
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粘膜によるウイルス捕捉
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一酸化窒素(NO)による抗菌・免疫調整作用
といった “呼吸器の最初の防御ライン” を担っています。
一方で、口呼吸になるとこうした防御が大幅に低下し、のどの粘膜が乾燥して感染しやすくなります。
実際、研究でも 鼻呼吸が感染リスクを下げることが示されており、冬場ほど“鼻の通り”の重要性を実感します。
鼻の通りが悪い、朝のどが痛い、口が乾く、いびきをかく――こうしたサインがあれば、冬の感染症リスクが上がりやすい状態です。
気になる方は早めに鼻のチェックをしてみてください。
◆ 医学的根拠
① 鼻は「加湿器・空気清浄機・加温器」の役割を持つ
研究では鼻呼吸によって吸気が37℃・湿度100%に近づくことが示されており、これがウイルス侵入から粘膜を守る第一防御になります。
一方、口呼吸では乾燥した冷たい空気が直接のどに当たり、粘膜のバリア機能(線毛運動・粘液防御)が低下することがわかっています。
② 鼻腔で産生される「一酸化窒素(NO)」が防御に重要
鼻腔・副鼻腔の粘膜は NO を産生します。
この NO は
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抗ウイルス・抗菌作用
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気道の血流調整
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免疫反応の最適化
に関わり、鼻呼吸で NO が肺に届くことが確認されています。
口呼吸ではこの NO の恩恵がほとんど得られません。
③ 鼻炎や鼻づまりで口呼吸になると感染リスクが上がる
アレルギー性鼻炎の患者では、鼻閉による口呼吸が気道感染症のリスクを増やすという報告があります。
特に冬季は乾燥・寒冷・花粉前症状などで鼻粘膜が敏感になりやすく、「風邪を引く前から口呼吸になっていた」というケースも多いです。
④ 口呼吸はのどの免疫低下(IgA分泌量低下)と関連
口呼吸を続けると、のどの粘膜を守る 分泌型IgA が低下することが研究で示されています。
IgAは風邪ウイルスを最前線でブロックする物質のため、低下すると感染症にかかりやすくなります。
◆ まとめ
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鼻は「空気を温める・湿らせる・浄化する」高性能フィルター
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副鼻腔由来 NO が抗菌・免疫に関与
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口呼吸は乾燥 → 粘膜バリア低下 → 風邪リスク増大
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冬ほど“鼻呼吸できているか”が免疫力の分かれ目
普段から鼻呼吸を意識して、感染症対策(特に冬)に役立ててください。
合わせて読みたい
◆ 参考文献
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Lundberg JO, Weitzberg E, Nordvall SL, Kuylenstierna R, Alving K. Primarily nasal origin of exhaled nitric oxide and absence in Kartagener’s syndrome. Eur Respir J. 1994;7(8):1501-1504.
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Niinimaa V, Cole P, Mintz S, Shephard RJ. The switching point from nasal to oronasal breathing. Respir Physiol. 1980;42(1):61-71.
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Watanabe K, Miyamoto Y, Matsuo K, Shimizu K, Katase T, Shinohara Y. Influence of mouth breathing on salivary flow rate and IgA secretion. Clin Oral Investig. 2017;21(7):2195-2201.
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Eccles R. A role for the nasal cycle in respiratory defence. Eur Respir J. 1996;9(2):371-376.
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Cho KS, Kim CS, Park YJ, Hong SL, Kim HY, Dhong HJ. Impact of nasal obstruction on the risk of respiratory infection: a clinical analysis. Allergy Asthma Proc. 2019;40(6):400-406.

