
睡眠と免疫 ― 寝不足が風邪を引きやすくする理由
◆ 院長コメント
2月は受験や年度末業務で忙しく、「睡眠時間が削られている」という方がとても多い時期です。
診療の現場でも、
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最近よく眠れていない
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夜更かしが続いている
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寝ても疲れが取れない
といった方ほど、風邪を繰り返す・治りにくい傾向を感じます。
睡眠は単なる休息ではなく、免疫を“整える時間” です。
特に深い睡眠中に、免疫細胞の働きや情報整理が行われることが、研究で明らかになっています。
短時間睡眠が続くと、一見元気そうでも体の防御力は確実に落ちています。
2月こそ「睡眠を削らない」ことが、最大の感染症対策になります。
◆ 医学的根拠
① 睡眠時間が短い人ほど風邪をひきやすい
有名な前向き研究では、睡眠時間が6時間未満の人は7時間以上眠る人に比べて感冒発症リスクが約4倍になることが報告されています。
これは年齢・喫煙・ストレスなどを調整した後でも認められた結果です。
② 睡眠不足は免疫細胞の働きを直接低下させる
睡眠不足が続くと、
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NK細胞(ウイルス感染初期を抑える細胞)の活性低下
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T細胞の情報伝達障害
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炎症性サイトカインの過剰反応
が起こることが実験研究で示されています。
結果として、感染しやすく、治りにくい体内環境になります。
③ 睡眠中に「免疫の記憶」が整理される
深いノンレム睡眠中には免疫細胞同士の情報交換が活発になり、病原体に対する“免疫記憶”が強化されます。
このため、
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ワクチン効果
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感染後の回復力
にも睡眠の質が影響します。
④ 寝不足は鼻・のどの局所免疫も低下させる
睡眠不足では、鼻やのどの粘膜を守る 分泌型IgA が低下することが報告されています。
これは耳鼻咽喉科領域において重要で、風邪・鼻副鼻腔炎・咽頭炎・扁桃炎を繰り返しやすくなる一因になります。
◆ まとめ
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睡眠は免疫を整える“能動的な時間”
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6時間未満の睡眠が続くと風邪リスクが大幅に上昇
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免疫細胞の機能・記憶形成に深く関与
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冬の感染症対策は「十分な睡眠」から
忙しい時期こそ、睡眠を削らない工夫が重要です。
合わせて読みたい
→ その他の「睡眠・生活等について」はこちら
◆ 参考文献
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Cohen S, Doyle WJ, Alper CM, Janicki-Deverts D, Turner RB.
Sleep habits and susceptibility to the common cold. Arch Intern Med. 2009;169(1):62-67. -
Irwin MR, McClintick J, Costlow C, Fortner M, White J, Gillin JC.
Partial night sleep deprivation reduces natural killer and cellular immune responses in humans. FASEB J. 1996;10(5):643-653. -
Besedovsky L, Lange T, Born J.
Sleep and immune function. Pflugers Arch. 2012;463(1):121-137. -
Prather AA, Hall M, Fury JM, et al.
Sleep and antibody response to hepatitis B vaccination. Sleep. 2012;35(8):1063-1069. -
Dimitrov S, Lange T, Nohroudi K, Born J.
Number and function of circulating human antigen presenting cells regulated by sleep. Sleep. 2007;30(4):401-411.

