◆ 外耳炎 ◆
ー 何気ない日常の習慣が原因 ー
近年、スマートフォンやオンライン会議の普及に伴い、イヤホンを長時間使用する方が増えています。
その影響もあり、耳の入口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起きる 外耳炎 が増えている印象です。
外耳炎は、日常のちょっとした習慣が引き金となって発症します。ここでは主な原因・症状・予防法についてご説明します。
■ 外耳炎の原因
外耳炎は以下のような行動が重なったときに起こりやすくなります。
● 耳掃除のやりすぎ
綿棒や耳かきで外耳道の皮膚をこすると、小さな傷ができ、炎症の原因となります。
● 耳栓・イヤホンの長時間使用
湿気がこもり、皮膚がふやけて弱くなることで、細菌やカビが繁殖しやすくなります。
● 入浴・シャワー時の水分・湿気
耳の中が湿った状態が続くと、外耳道炎が起こりやすくなり、長期化すると治りにくくなります。
■ 外耳炎の主な症状
● 耳がかゆい
● 耳が痛い
● 耳だれ(耳漏)が出る
● 聞こえにくい(こもった感じがする)
外耳道が湿った状態が長く続くと、抗生剤が効きにくい細菌 や カビ(真菌) が増えてしまい、症状が長引くことがあります。
■ 外耳炎の予防と対策
外耳炎は日常の習慣を見直すことで予防できるケースが多い病気です。
● 耳掃除は“軽め”に! やりすぎないこと
耳掃除は月1〜2回でも十分と言われています。綿棒も浅い部分を軽く触る程度で十分です。
● イヤホンを長時間使わない
1時間使用したら2時間外すなど、耳を休ませる時間をしっかり確保しましょう。
● 耳を必要以上に触らない
違和感があっても触りすぎると炎症が悪化します。
外耳炎は、適切なケアと予防で改善しやすい疾患です。
耳だれが続く場合・痛みが強い場合・聞こえにくさが長引く場合 は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。




上段左:正常外耳道
上段右:急性外耳炎・経度
下段左:急性外耳炎・重症
下段右:慢性外耳炎
◆ 滲出性中耳炎 ◆
― 記憶にない・痛くない中耳炎 ―
「中耳炎」と聞くと、「耳が痛くなる病気」と思う方が多いかもしれません。
でも実は、痛くない中耳炎もあるんです。
それが「滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)」です。
■ 中耳炎の種類
中耳炎には大きく分けて2種類あります。
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急性中耳炎:痛みや発熱を伴うタイプ
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滲出性中耳炎:痛みは少ないが、聞こえが悪くなるタイプ
どちらも、鼻やのどの炎症が耳管(じかん)を通って耳へ広がることで起こります。
炎症が急激に起きると急性中耳炎、ゆっくり起きたり治りきらなかった場合に滲出性中耳炎になります。
■ 滲出性中耳炎(+その症状)とは
滲出性中耳炎では、鼓膜の奥にある空気の部屋(鼓室)に“滲出液”という液体が溜まります。
そのため鼓膜が動きにくくなり、次のような症状が出ます。
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耳がふさがった感じがする
-
聞こえにくい、音がこもる
-
痛みはほとんどない
このため、本人も気づかないことが多いのが特徴です。
■ 子どもに多い理由と注意サイン
滲出性中耳炎は、3~6歳ごろに最も多く見られます。
この時期は「ことば」や「音」をたくさん学ぶ大切な時期なので、聞こえにくい状態が続くと発達に影響することもあります。
こんな様子が見られたら注意しましょう。
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テレビの音を大きくする
-
声がいつも大きい
-
呼んでも返事をしないことがある
-
耳をよくさわる
こうしたサインがある場合は、一度耳鼻科でのチェックをおすすめします。
特に、過去に中耳炎を繰り返したお子さんは再発しやすい傾向があります。
■ 治療について
まずは、原因となる鼻の炎症を落ち着かせることが大切です。
副鼻腔炎(ちくのう)を伴っている場合は、その治療も並行して行います。
症状に応じて以下のような治療を行います。
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鼓膜のマッサージや耳管通気(みみに空気を送る治療)
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必要に応じて鼓膜切開で滲出液を除去
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慢性化している場合は、鼓膜にチューブを入れる手術を行うことも
■ まとめ
滲出性中耳炎は痛みが少ないため、気づかないまま長引くことがあります。
放置すると聴力や言葉の発達に影響することもあるため、「聞こえ方がいつもと違う?「呼んでも返事しない」「聞き返しが増えた?」と感じたら、早めの受診をおすすめします。











左から
<正常の鼓膜所見>
<急性中耳炎の鼓膜所見>
(左)軽症 : 急性炎症によって鼓膜が強く発赤し、 外耳道にまで炎症が及んでいる
(右)重症 : 鼓膜の奥(中耳)に膿が貯留して鼓膜が腫れている
耳痛が強く、程度がひどいと鼓膜が破裂して耳漏が出る
鼓膜切開による排膿を要する状態
<滲出性中耳炎の鼓膜所見>
中耳腔に貯留した滲出液が液面形成している(→部)
鼓膜の可動性が悪化し、程度によっては聴力に影響を与える
<慢性中耳炎(鼓膜穿孔例)の鼓膜所見>
この症例では鼓膜全体の1/4程度の穿孔が観察できる(→部)
中耳腔は常に外界に接触し、細菌感染から耳漏を生ずる機会が増加する
どんな時にめまいが起こりやすい?
◆ メニエール病・突発性難聴 ◆
「めまい」や「耳鳴り」「聞こえにくさ」を感じたことはありませんか?
こうした症状の背景には、メニエール病や突発性難聴といった内耳の病気が隠れていることがあります。
実は、これらの病気に悩まされている著名人も少なくありません。
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メニエール病:久保田利伸さん、ハイヒールモモコさん など
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突発性難聴:浜崎あゆみさん、スガシカオさん など
■ 原因・誘因
いずれも、耳の奥(内耳)で起こる障害ですが、はっきりした原因はまだ分かっていません。
ただし、「疲れ・ストレス・寝不足・頸/肩のコリなど」がきっかけとなることが多いとされています。
メニエール病 ・・・ 内耳の「内リンパ」という液体が過剰にたまり、むくみ(内リンパ水腫)が起こる
突発性難聴聴 ・・・ 神経のウイルス感染や血流障害などが関与すると考えられている
■ 主な症状
メニエール病
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回転性のめまい(ぐるぐる回る感じ、多くは数時間~半日・一日続く)
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耳鳴り
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難聴(特に低音が聞こえにくくなる)
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これらの症状を繰り返すのが特徴
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突発性難聴
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ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる
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「昨日までは聞こえていたのに急に…」というケースが多い
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めまいや耳鳴りを伴うこともある
■ 治療について
どちらの病気も、早期治療がとても大切です。
治療開始が遅れるほど、回復の可能性が下がると言われています(特に突発性難聴)。
主な治療法は次の通りです。
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内服薬(循環改善薬、ビタミン剤、ステロイド剤 など)
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点滴治療(血流改善・ステロイド剤・血管拡張薬など)
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生活改善(安静、ストレス軽減、十分な睡眠)
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必要に応じて病院紹介・精密検査
■ 早めの受診が大切です
耳の病気は「少し様子を見よう」と思っているうちに、治りにくくなることがあります。
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耳がつまった感じがする
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めまいが繰り返す
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耳鳴りが続く
そんなときは、早めに耳鼻科を受診してください。
早期の対応が、聴力の回復につながります。


◆ 気象病(天気痛) ◆
― 気圧変化で起こる身体の不調 ―
■ 気象病とは
天候や気圧・気温の変化により、体調が崩れやすくなる状態を「気象病」と呼びます。
特に、**頭痛や体の痛みが気圧変化によって悪化する場合を「天気痛」**といいます。
季節の変わり目、梅雨、台風前後に症状が強くなる方が多く、近年は天候の急変が増えたこともあり、訴える方が増えています。
■ なぜ気象病が起こるのか(耳との関係)
耳の奥にある 内耳 には、体の平衡感覚だけでなく「気圧の変化」を感じ取るセンサーがあります。
急な気圧変化を内耳が察知すると、その刺激が脳へ伝わり、自律神経のバランスが崩れやすくなると考えられています。
この自律神経の乱れが、さまざまな症状につながります。
■ 主な症状
耳鼻咽喉科領域では、次の症状がみられます。
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めまい
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耳閉感(耳に膜が張ったような感じ)
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頭痛
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耳鳴りの悪化
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天候に伴うなんとなくの体調不良
また、
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メニエール病(めまい・耳鳴・難聴を繰り返す病気)
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副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎
などの症状が、天候によって悪くなることもあります。
■ 悪化しやすいタイミング
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気圧が急に下がるとき(雨・台風の前)
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梅雨など長期間にわたり湿度が高い時期
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季節の変わり目
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気温差が大きい日
さらに、疲労・睡眠不足・ストレスがあると症状が出やすくなります。
■ 治療について
症状に合わせて、以下の薬剤を使用することがあります。
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鎮痛薬
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抗めまい薬
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漢方薬
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内耳機能の調整を目的とした薬
ただし、根本的には「生活リズムを整え、悪化要因を減らす」ことが重要です。
■ 日常でできる対策
気象病を完全に防ぐことはできませんが、次のような対策で症状が軽くなりやすくなります。
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十分な 睡眠 をとる
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疲労やストレスをためない
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生活リズムを整える
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冷房の効かせすぎなど、体を冷やさない
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バランスのよい食事を心がける
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軽い運動やストレッチで血流を良くする
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自分なりのリラックス法を持つ
体調管理がしやすくなることで、気象病の影響が少なくなります。
■ 受診をおすすめするケース
次のような場合は、耳鼻咽喉科での診察をおすすめします。
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めまいや耳閉感が繰り返し起こる
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雨や天候の変化に合わせて症状が毎回強くなる
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頭痛や耳鳴りが日常生活に支障を来している
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メニエール病や副鼻腔炎が疑われる症状がある
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市販薬で改善しない
天候と症状の関係を詳しく伺い、必要に応じて検査・治療を行います。

🎧 ヘッドホン・イヤホン難聴、実は10代〜20代で急増中!
音楽や動画、ゲーム…毎日のイヤホンはもう“生活の一部”ですよね。
でも最近、**若い世代で「聞こえづらい」「耳鳴りがする」**という相談が本当に増えています。
これはいわゆる“ヘッドホン・イヤホン難聴(騒音性難聴)”。
実際に、長時間・高音量使用と聴覚ダメージの関連が報告されています ⇒ こちら
🔥 こんな使い方は要注意!
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ボリュームがスマホ音量の半分以上
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1時間以上つけっぱなし
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周りの音を消すために音量を上げがち
-
睡眠時につけたまま
耳の中の細い「有毛細胞」は、一度ダメージを受けると元に戻りません。
まだ自覚症状がなくても、知らない間に少しずつ進行します。
👂 今すぐできる“耳を守るコツ”
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音量は 「最大の60%以内」
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1時間使ったら最低でも 5〜10分休憩
-
ノイズキャンセリングを使って“音量を上げない”
地下鉄などの騒音環境下でイヤホンを使う場合、ノイズキャンセリング機能を使ったほうが難聴リスクを下げられるという実験結果もあり ⇒ こちら
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寝るときはイヤホンを外す
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「最近聞き返すことが増えた」「耳鳴りがする」は受診のサイン
🎵 ずっと音楽を楽しむために
耳のトラブルは放置しても自然には治りません。
「ちょっと変だな?」と思ったら、早めに相談してくださいね。
日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会のHPにも詳しく説明されています ⇒ こちら
< 耳の検査 >
*聴力検査
専用の検査室の中で行います。耳にヘッドホンをあて、音が聞こえたらボタンを押して合図して頂きます。左右交互に、低い音から高い音まで全体的な聴力を測ります。
難聴には大きくわけて
1.音の伝わりが悪い難聴(伝音性難聴):中耳炎などの場合 と
2.聞こえの神経の機能が悪い難聴(感音性難聴):突発性難聴などの場合 がありますが、この検査によって、聴力の左右差や難聴の型の判定が可能です。
病気の診断のため、治療効果の判定のため、また定期的な聴力チェックなどのために行います。
検査結果の見方
下図にある○・×は、それぞれ○が右の聴力(実線で結ぶ)を、×が左の聴力(点線で結ぶ)を表します。
この聞こえの線は上にあるほど聴力が良いということで、縦軸の数字(dB)が小さいほど、小さい音で聞こえる(=聴力が良い)という意味です。正常はおよそ20dBから上です。また、横軸の数字(Hz)は音の高低を表します。
もうひとつ、かぎ括弧([・])がありますが、これはそれぞれ右・左の神経の聞こえを表します。
聴力が正常の場合は、○・×の聞こえと[・]の聞こえが両方とも正常範囲内にあります.。


右.伝音性難聴
左.感音声難聴
1. 右の伝音性難聴の聴力像です。実際の聴力(○を結んだ線)は低下しているのに、 [ で示されている神経の聞こえのレベルは正常です。すなわち、耳に音が入ってから、神経に伝わるまでの間に音の伝わりを阻害する要素(中耳炎など)があるということです。
2. 両側の感音声難聴の聴力像です。右左ともに実際の聴力に加えて神経の聞こえのレベルまで低下しています。この場合は、中音~高音にかけての聴力低下がみられます。
*ティンパノグラム
鼓膜の動きを調べる検査です。耳にシリコン製の栓をして、鼓膜にプラス・マイナスの圧をかけます(痛みはありません)。この圧変化に対応して、鼓膜がキチンと反応して動くかどうかをチェックします。
滲出性中耳炎で鼓膜の奥(中耳)に浸出液が貯留している場合などでは、鼓膜の可動性が悪化します。滲出性中耳炎が疑われる場合、滲出性中耳炎の治療経過を判定する場合に行います。
滲出性中耳炎は痛みがなく、聴力低下も経度のため、状態を把握しにくいです。かといって、放置すると余計に直りにくくなってしまいますので、定期的にチェックする必要があります。
鼓膜にプラス・マイナスの圧変化を加えた場合(赤線部)、正常の鼓膜は圧がゼロになった時に一番良く動きます(ゼロのところにピークがある山ができる 青矢印 : 下図A タイプ)。
滲出性中耳炎などで中耳に炎症があったり、滲出液を溜めている場合は、鼓膜の動きが悪くなってピークがずれたり(赤矢印:下図 C タイプ)、程度がきついと動きがみられなくなったりします(下図 B タイプ)。
ただし、「鼓膜の動きが悪い=聞こえが悪い」ではありません。



*レントゲン
耳の奥にある含気腔(乳突洞といいます)の発育の程度、炎症の程度を調べます。また、内耳道(聞こえの神経が通っている場所)を観察し、聴神経腫瘍の疑いがないかどうかをチェックします。
必要に応じて、CT・MRIなどを予約します(近くの病院へ撮影に行って頂きます)。
*鼓膜鏡
鼓膜・中耳を観察する内視鏡検査です。中耳炎の場合に鼓膜の詳しい状態を観察するため、また慢性中耳炎で鼓膜穿孔がある場合に中耳の状態を観察するために行います。
モニターに映した画像は同時に患者さんにも見て頂き、自身の耳の状態を理解・把握して頂いています。
急性中耳炎で鼓膜が赤くなっていても、痛みが出ていないことがよくあります。そんな時に「鼓膜が赤いです」とだけ言われてもピンときませんね。実際に所見を映して見てもらえれば「本当だ、赤い・・・」と納得でき、ひどくなる前に自分の意思で対処が可能になるのです。
*細菌検査
耳漏がでる場合、その中の細菌を調べる検査です。綿棒で耳漏を採取し検査に出します(結果は3・4日で出ます)。最近問題になっている、薬剤に効きにくい耐性菌がついたりしていないか、などをチェックします。慢性炎症の場合、カビが検出されることもあります!



