◆ 外耳炎 ◆
最近になって急増している疾患です。
文字通り外耳道に起こる炎症ですが、その主な原因は以下の3つ。
● 耳掃除をやり過ぎている
● 日常的にイヤホンを使っている
● 入浴・シャワーの際に水分・湿気が入る
この状態が日常的に繰り返されることで炎症を起こすんです。
症状としては、
● 耳がかゆい(痛い)
● 耳漏が出る
● 聞こえにくい(難聴)
外耳道炎で耳の中が湿った状態が長期化すると、抗生剤が効かない細菌やカビが繁殖することもあります!
対策として重要なのは、原因を避けること。
● 耳掃除は綿棒を使って軽めに
● イヤホンを長時間使用しない
(1時間使ったら2時間は外す)
上段左:正常外耳道
上段右:急性外耳炎・経度
下段左:急性外耳炎・重症
下段右:慢性外耳炎
記憶にない中耳炎がある!?
◆ 急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎 ◆
そもそも中耳炎には、大きく分けて2種類あります。1つはよく言う痛くなる中耳炎(急性中耳炎)で、もう1つは痛くはないけれども程度によっては聞こえが悪くなる中耳炎(滲出性中耳炎)です。
中耳炎というものは、多くの場合、はなやのどの炎症が耳管を通じてみみの方へ広がって起こります。この炎症の広がりが急激に起きれば痛みを伴う急性中耳炎として発症しますが、序々に起きた場合、もしくは急性中耳炎が治りきらない場合に滲出性中耳炎になります。
この状態では鼓膜の奥にある空気の部屋(鼓室)に滲出液が溜まるので、鼓膜の動きが鈍くなり「耳がふさがった感じ」や「聞こえが悪い」などの症状が現われます。ただし、症状が極端にひどくなることが少ないため、かかっても気がつかない事が多く、特に子供には注意が必要です。
● テレビの音を大きくする
● いつも声が大きい
● 呼んでも返事をしないことが多い
● 耳をよくさわる
などの症状があるときは、滲出性中耳炎を疑う必要があるんです。
困ったことに滲出性中耳炎にかかりやすい年齢(3~6歳がピークとされています)は、いろんなことを聞いて覚えたりするのに重要な時期に一致します。子供の耳は定期的にチェックしてあげましょう(今までに中耳炎を起こしたことのある子供さんはクセになることがあり、特に注意が必要です)。
治療にあたっては、はなの状態を落ち着かせるのが第一です(ちくのうがある場合、その治療が必要です)。その上で鼓膜のマッサージやみみに風を通す治療を行います。それでも経過が思わしくない場合には、鼓膜切開をして鼓膜の奥に溜まった滲出液を取り除く治療や、鼓膜にチューブを入れる手術が必要になることがあります。
左から
<正常の鼓膜所見>
<急性中耳炎の鼓膜所見>
(左)軽症 : 急性炎症によって鼓膜が強く発赤し、 外耳道にまで炎症が及んでいる
(右)重症 : 鼓膜の奥(中耳)に膿が貯留して鼓膜が腫れている
耳痛が強く、程度がひどいと鼓膜が破裂して耳漏が出る
鼓膜切開による排膿を要する状態
<滲出性中耳炎の鼓膜所見>
中耳腔に貯留した滲出液が液面形成している(→部)
鼓膜の可動性が悪化し、程度によっては聴力に影響を与える
<慢性中耳炎(鼓膜穿孔例)の鼓膜所見>
この症例では鼓膜全体の1/4程度の穿孔が観察できる(→部)
中耳腔は常に外界に接触し、細菌感染から耳漏を生ずる機会が増加する
どんな時にめまいが起こりやすい?
◆ メニエール病・突発性難聴 ◆
この病名を聞いたことがある方は多いと思います。
多くの著名人も悩まされているようですね。
メニエール病・・・久保田利伸、ハイヒールモモコなど
突発性難聴・・・浜崎あゆみ、スガシカオなど
<原因>
◎メニエール病・・・内耳の内リンパと言われる部位に浮腫(ふしゅ:余計な水分が溜まる)がおこる
◎突発性難聴・・・聴神経のウイルス感染、循環障害
いずれも明確な原因は解明されていませんが、誘因として多いのは「寝不足」「疲れ」「ストレス」などです。
<症状>
◎ メニエール病・・・典型例では「めまい」「耳鳴り」「難聴(比較的軽度の低音障害型難聴が多いです)」をきたします。何より特徴なのは、これらの症状を不定期に繰り返すことです。
◎ 突発性難聴・・・文字通り日時を特定できるほど突然に発症する難聴(多くは高度難聴)が特徴で、中にはめまいや耳鳴りを合併するケースもあります。
<治療>
・内服薬・・・循環改善薬、ビタミン剤、ステロイド剤など
・点滴・・・内服薬と同等の内容(容量が異なる場合があります)に加えて血管拡張薬など
・安静、ストレス軽減、睡眠時間確保など
・経過によっては病院紹介が必要に
発症から治療開始までの期間が長くなると治療効果が得られにくくなる、と言われているので、「おかしい!」と思ったら早めに受診することをお勧めします。
< 耳の検査 >
*聴力検査
専用の検査室の中で行います。耳にヘッドホンをあて、音が聞こえたらボタンを押して合図して頂きます。左右交互に、低い音から高い音まで全体的な聴力を測ります。
難聴には大きくわけて
1.音の伝わりが悪い難聴(伝音性難聴):中耳炎などの場合 と
2.聞こえの神経の機能が悪い難聴(感音性難聴):突発性難聴などの場合 がありますが、この検査によって、聴力の左右差や難聴の型の判定が可能です。
病気の診断のため、治療効果の判定のため、また定期的な聴力チェックなどのために行います。
検査結果の見方
下図にある○・×は、それぞれ○が右の聴力(実線で結ぶ)を、×が左の聴力(点線で結ぶ)を表します。
この聞こえの線は上にあるほど聴力が良いということで、縦軸の数字(dB)が小さいほど、小さい音で聞こえる(=聴力が良い)という意味です。正常はおよそ20dBから上です。また、横軸の数字(Hz)は音の高低を表します。
もうひとつ、かぎ括弧([・])がありますが、これはそれぞれ右・左の神経の聞こえを表します。
聴力が正常の場合は、○・×の聞こえと[・]の聞こえが両方とも正常範囲内にあります.。
右.伝音性難聴
左.感音声難聴
1. 右の伝音性難聴の聴力像です。実際の聴力(○を結んだ線)は低下しているのに、 [ で示されている神経の聞こえのレベルは正常です。すなわち、耳に音が入ってから、神経に伝わるまでの間に音の伝わりを阻害する要素(中耳炎など)があるということです。
2. 両側の感音声難聴の聴力像です。右左ともに実際の聴力に加えて神経の聞こえのレベルまで低下しています。この場合は、中音~高音にかけての聴力低下がみられます。
*ティンパノグラム
鼓膜の動きを調べる検査です。耳にシリコン製の栓をして、鼓膜にプラス・マイナスの圧をかけます(痛みはありません)。この圧変化に対応して、鼓膜がキチンと反応して動くかどうかをチェックします。
滲出性中耳炎で鼓膜の奥(中耳)に浸出液が貯留している場合などでは、鼓膜の可動性が悪化します。滲出性中耳炎が疑われる場合、滲出性中耳炎の治療経過を判定する場合に行います。
滲出性中耳炎は痛みがなく、聴力低下も経度のため、状態を把握しにくいです。かといって、放置すると余計に直りにくくなってしまいますので、定期的にチェックする必要があります。
鼓膜にプラス・マイナスの圧変化を加えた場合(赤線部)、正常の鼓膜は圧がゼロになった時に一番良く動きます(ゼロのところにピークがある山ができる 青矢印 : 下図A タイプ)。
滲出性中耳炎などで中耳に炎症があったり、滲出液を溜めている場合は、鼓膜の動きが悪くなってピークがずれたり(赤矢印:下図 C タイプ)、程度がきついと動きがみられなくなったりします(下図 B タイプ)。
ただし、「鼓膜の動きが悪い=聞こえが悪い」ではありません。
*レントゲン
耳の奥にある含気腔(乳突洞といいます)の発育の程度、炎症の程度を調べます。また、内耳道(聞こえの神経が通っている場所)を観察し、聴神経腫瘍の疑いがないかどうかをチェックします。
必要に応じて、CT・MRIなどを予約します(近くの病院へ撮影に行って頂きます)。
*鼓膜鏡
鼓膜・中耳を観察する内視鏡検査です。中耳炎の場合に鼓膜の詳しい状態を観察するため、また慢性中耳炎で鼓膜穿孔がある場合に中耳の状態を観察するために行います。
モニターに映した画像は同時に患者さんにも見て頂き、自身の耳の状態を理解・把握して頂いています。
急性中耳炎で鼓膜が赤くなっていても、痛みが出ていないことがよくあります。そんな時に「鼓膜が赤いです」とだけ言われてもピンときませんね。実際に所見を映して見てもらえれば「本当だ、赤い・・・」と納得でき、ひどくなる前に自分の意思で対処が可能になるのです。
*細菌検査
耳漏がでる場合、その中の細菌を調べる検査です。綿棒で耳漏を採取し検査に出します(結果は3・4日で出ます)。最近問題になっている、薬剤に効きにくい耐性菌がついたりしていないか、などをチェックします。慢性炎症の場合、カビが検出されることもあります!