睡眠時無呼吸症候群 Sleep Apnea Syndrome:SAS
《 はじめに 》
睡眠時無呼吸のある人は、高血圧・心疾患・脳卒中・居眠り事故などのリスクが大きく高まることが分かっています。
これが「いびきくらい…」では済まされない理由です。
いびきや無呼吸は、単に“音の問題”ではなく、身体に害を及ぼす病気。
まずはご自身の状態が「音の問題」なのか「健康リスクの問題」なのかを知ることが大切です。
●(無呼吸の前に)まず“睡眠不足のこわさ”を知ってください
睡眠時無呼吸を理解するうえで、より重要な前提があります。
それは **「睡眠不足自体がすでに大きな健康リスク」**であること。
日本人の平均睡眠時間は、主要18か国の中で 下から2番目。
忙しさやスマホ習慣などの影響で、多くの人が気づかないまま慢性的な睡眠不足に陥っています。
睡眠不足は
-
集中力・免疫力の低下
-
生活習慣病のリスク上昇
-
メンタル不調
など、様々な悪影響をもたらします。
そこに無呼吸が加わると睡眠の質はさらに悪化し、心身への負担は一気に増大します。
だからこそ、まずは “自分はきちんと眠れているか?” を見直すことが、無呼吸対策への第一歩なのです。
● 睡眠不足は百害あって一利なし!
● 睡眠不足は体を壊す!
● 睡眠不足・眠り過ぎ どちらも短命?
● よく眠ると免疫力アップ!
● 良い睡眠でお肌スベスベ

睡眠不足は百害あって一利なし!
【研究データ】
睡眠時間が5時間未満の日が続くと、脳の働きは チューハイ2~3杯分の飲酒状態と同程度まで低下 すると報告されています。
また、睡眠中に分泌される 成長ホルモンやメラトニン(抗老化ホルモン) は細胞の修復・老化防止に重要ですが、睡眠不足ではこれらの分泌が低下します。
さらに、睡眠不足は 脂肪や糖の代謝を悪化させ、肥満や血糖値上昇につながる こともわかっています。
(睡眠評価研究機構 白川修一郎 代表)
【かみくだき解説】
睡眠不足は「脳の働き・若さ・代謝」のすべてを同時に低下させます。
寝不足が続くと、判断力が鈍り、老化が進み、太りやすくなるという“三重苦”に陥ります。
【院長コメント(患者さん向け一言)】
軽く酔ったような状態で勉強や仕事の能率が上がるはずがありません。
さらに、睡眠中には細胞や遺伝子の修復、お肌の回復も行われています。
「最近太りやすい」「肌が荒れやすい」という方は、まず睡眠を見直しましょう。
睡眠不足は体を壊す!
【研究データ】
45歳以上の 54,269人 を対象にした大規模調査では、
睡眠時間が6時間以下の人、10時間以上の人のどちらも、肥満・糖尿病・心臓病の有病率が高い ことが報告されています。(Youngら:SLEEP 2013)
【かみくだき解説】
睡眠が短すぎても、長すぎても、体にとっては負担になります。
特に睡眠不足は 自律神経を乱し、血圧上昇や血糖値異常を引き起こしやすくなります。
【院長コメント(患者さん向け一言)】
寝不足による昼間の眠気を、缶コーヒーなどの糖分で補う生活が続くと、糖尿病や高血圧、心臓病のリスクがさらに高まります。
「眠れない」こと自体が、すでに生活習慣病の入り口かもしれません。
睡眠不足・眠り過ぎ どちらも良くない
【研究データ】
日本人を対象とした大規模研究(JACC Study)では、睡眠時間が短すぎる場合も、長すぎる場合も死亡率が高く、最も死亡率が低かったのは「7時間睡眠」 でした。
(Tamakoshi A, et al. Sleep 2004)
【かみくだき解説】
「たくさん寝れば健康に良い」というわけではありません。
“短すぎず、長すぎず、質の良い睡眠”が最も重要 なのです。
【院長コメント(患者さん向け一言)】
睡眠は「時間」だけでなく「質」が命です。
いびきや無呼吸があると、7時間寝ていても“実質は寝不足”になってしまいます。

よく眠ると風邪をひきにくくなる!
【研究データ】
私たちの体は眠っている間に、ウイルスと戦う「T細胞」「NK細胞」などの免疫細胞を活性化させます。
一方で睡眠不足は、ストレスホルモン(コルチゾール)を増やし、これらの免疫細胞の働きを低下させてしまいます。
研究では、睡眠が6時間未満の人は7時間以上眠る人に比べて風邪の発症率が約4倍高いことが示されています(Prather et al., 2015)。
またワクチン接種後の抗体産生も十分な睡眠を取った人の方が高く、感染を防ぐ力も強いと報告されています。
【かみくだき解説】
睡眠は、体が自分自身を「守る力」を回復させる時間です。
寝不足が続くと、風邪・インフルエンザ・新型コロナなどにかかりやすくなります。
【院長コメント(患者さん向け一言)】
良い睡眠は、自然にできる 最強の感染予防 です。
「最近よく体調を崩す」という方ほど、まず睡眠を見直しましょう。
参考文献
-
Prather AA, et al. Sleep and susceptibility to the common cold. Sleep. 2015.
-
Besedovsky L, et al. Sleep and immune function. Pflugers Arch. 2012.
-
Spiegel K, et al. Effect of sleep loss on immunity. JAMA. 2004.
-
Benedict C & Cedernaes J. Sleep and immune regulation. Semin Immunol. 2021.
美容のための“睡眠”の重要性
【研究データ】
睡眠不足は肌のバリア機能を低下させ、炎症を起こしやすくする ことが報告されています(Benedict ら, 2016)。
また、熟睡できない日が続くと、コラーゲンを作る力が落ち、シワやたるみにつながる 可能性も示されています(Erschens ら, 2018)。
さらに、睡眠は自律神経を整え、血流を改善し、肌細胞へ栄養を届ける働きもあります。つまり、質の良い睡眠は最も基本でありながら、もっとも効果的な“美容ケア”のひとつと言えるのです。
■ 今日からできるポイント
・就寝前のスマホを控え、光刺激を減らす
・ぬるめの入浴でリラックス
・寝る前の軽いストレッチや深呼吸
・寝る前の飲酒・カフェインは控える
【かみくだき解説】
良い睡眠は、血流を改善し、肌細胞にしっかり栄養を届けます。
質の良い睡眠は、最も基本で、最も効果的な“美容ケア”です。
【院長コメント(患者さん向け一言)】
私たちの肌は、眠っている間に修復・再生が行われています。十分な睡眠が取れないと、肌荒れやくすみ、老化の進行につながることが医学的にも分かっています。
「最近お肌の調子が悪い」「化粧ノリが悪い」そんな時は、スキンケアだけでなく 睡眠そのものを見直すことが大切 です。
⚠ このような症状がある方は要注意
-
いびきが大きい
-
寝ている時に呼吸が止まる
-
朝すっきり起きられない
-
日中に強い眠気がある
-
集中力・記憶力が低下してきた
→ これらは 睡眠時無呼吸症候群(SAS) のサインかもしれません。
▶ 大人のいびき・睡眠時無呼吸について詳しく知りたい方は こちら
「いびき」「日中の強い眠気」「高血圧との関係」「検査・治療(CPAP)」などを詳しく解説しています。
▶ 子供のいびき・睡眠時無呼吸について詳しく知りたい方は こちら
アデノイド・扁桃肥大、成長や学習への影響、検査・治療についてわかりやすく解説しています。
✅ 睡眠時無呼吸・いびきセルフチェック
当てはまるものにチェックを入れてみましょう
□ 家族や周囲から「いびきが大きい」と言われたことがある
□ 寝ている間に呼吸が止まっていると言われたことがある
□ 夜中に何度も目が覚める
□ 朝起きても「ぐっすり眠った感じ」がしない
□ 起床時に頭痛や口の渇きがある
□ 日中に強い眠気がある・居眠りしそうになる
□ 集中力・記憶力が落ちたと感じる
□ 高血圧・糖尿病・脂質異常症を指摘されている
□ 以前より体重が増えた
□ 首が太い・あごが小さいと言われたことがある
✅ チェック結果の目安
-
✅ 0〜1個
今のところ大きな心配は少なそうですが、睡眠の質には引き続き気を配りましょう。 -
✅ 2〜3個
睡眠の質が低下している可能性があります。いびき・眠気が気になる方は一度ご相談ください。 -
✅ 4個以上
睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
放置すると高血圧・心疾患・脳卒中などのリスクが高まるため、早めの検査をおすすめします。
「いびきくらい…」と思っていませんか?当院では睡眠時無呼吸の検査・治療を行っています。眠っている間の呼吸は自分では分からないものです。気になる方は一度ご相談ください。
