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● 小児のいびき・SAS

いびきが学校の成績に悪影響!

 

 "Pediatrics" という医学雑誌に掲載された論文で、「いびきなどの睡眠時呼吸障害がある子供は学校の成績が悪い」という結果が出ました。( Otago study shows clear link to worse learning outcomes in child snorers)

 

分析の概要

 この論文では、世界12ヶ国の小中学生男女における睡眠時の呼吸障害の程度とと国語・算数・理科の成績との関係を調べた複数の研究のデータを分析しています。

 

結果

 睡眠時の呼吸障害が見られる子供では国語・算数・理科の成績が平均よりも悪いという結果でした。

<院長コメント>

 睡眠時の呼吸障害が見られる子供では睡眠の質が悪いために行動や集中力に問題が生じており、それが学習能力の低下につながっている可能性があります。

 いびきの原因として考えられるのは扁桃やアデノイドの肥大・鼻の疾患による鼻呼吸障害・肥満などの問題ですが、もしそのような状態にあるのなら適切な対処が望まれます。

子供のいびき、無呼吸、成績

◆ 小児のいびき・睡眠時無呼吸の原因 ◆

 

1.口蓋扁桃肥大、アデノイドの肥大

2.鼻呼吸障害(アレルギー・副鼻腔炎など)

3.その他(肥満・顎顔面形態異常など)

「普段は静かにスムーズに眠れているのに最近急に睡眠状態が悪化した!」という場合、多くのケースは幸いにも急ぎで(手術を含めた)対策を必要としません。

問題となるのは、長期間にわたって・毎晩・苦しそうな睡眠が継続するケースです。

お子さんに気になる状態がある場合、「いつ頃から?」「毎晩(かどうか)?」「どんな症状で苦しそう?」を確認してあげて下さいね。

それらを確認頂いた上で「やはり心配」「結構、身体への負担が大きそう」という場合はキチンとチェックが必要になります。

◆ 診療の実際 ~診断・検査~ ◆ 

診療予約をお取り頂きます

 

◎ 問診・視診による診断

・普段の睡眠状態につき問診します。

 → いびき・無呼吸は毎晩?、どちらを向いて眠ることが多い?、寝相は?など

・鼻・口腔内の視診

・鼻咽腔ファイバースコープを用いてアデノイドを観察する場合もあります。

・お子さんが眠っている際の動画をお持ち頂けるとわかりやすいです。

 → 仰向けで眠っている際に胸郭の動きが観察できる動画があれば、状態把握の役に立ちます

左:口蓋扁桃肥大、右:アデノイド肥大

​いずれも気道が極端に狭くなっています

◎ 機器を用いた検査

  ・睡眠中の血中酸素濃度を測定・記録することで、呼吸の安定性・身体への負荷の有無・程度を把握します。

  ・機器を貸し出しの上ご自宅で測定して頂き、機器返却後数日の解析期間を経て判定します。

小児の睡眠時酸素飽和度モニター検査

 

腕に装着する機器を用いて、酸素飽和度の変化から身体への悪影響の程度を把握します

◆ 治療 ◆

 

1.鼻呼吸の確保 → アレルギー・副鼻腔炎がある場合はその治療が最優先

2.手術加療 → 口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除術など

​3.鼻の治療などを経て、一定期間経過後に再度機器を用いた検査で治療前との比較を行う場合もあります。

軽症~中等度無呼吸の患児には手術?経過観察?

 

Marcus CL, Moore RH, et al : A randomized trial of adenotonsillectomy for childhood sleep apnea.

N Engl J Med 2013: 368: 2366-2376.

 

◎ 2013年にアメリカで行われたCHAT(The Childhood Adenotonsillectomy Trial) study

◎ 軽度~中等度睡眠時無呼吸の診断がついた5から9歳の児397人を2つの群に振り分けた

◎ 1群は手術加療の後に経過観察、2群は何もせずに経過観察し、7か月後に評価を行った

◎ 無呼吸の治癒率は 1群 79%、2群 46% であった

<院長コメント>

 この研究から言えることは、「やはり手術加療の効果は高い」ということと、同時に「自然治癒が50%弱もある」という相反する事実ですね。

 重症例には間違いなく手術加療が勧められますが、軽症~中等度の例には慎重な判断が求められる、と言えます。保護者の方としっかりと相談しなければいけません。

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