睡眠時無呼吸症候群(SAS)と車の運転 ニュースから考える「安全運転」とCPAP治療の大切さ
- shibata.ent

- 8月7日
- 読了時間: 5分
更新日:5 時間前
2026年8月、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が関係したとみられる交通事故が報道されました。
報道によると、SASと診断されCPAP治療を指示されていた方が、事故前日にCPAPを使用せず車を運転し、居眠り運転による重大な事故を起こしたとして書類送検されています。
このニュースをご覧になり、
「SASと診断されたら運転できないの?」
「CPAPを使っていれば安心なの?」
「運転するときに気を付けることは?」
と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、SASだから運転できないわけではありません。
まずお伝えしたいことがあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されたからといって、運転が禁止されるわけではありません。
道路交通法や運転免許制度でも、重要なのは病名そのものではなく、日中の強い眠気などによって安全な運転に支障を及ぼす状態かどうかです。
適切な治療を受け、眠気が改善している多くの患者さんは、普段どおり仕事や日常生活、車の運転をして頂いて構いません。
「受診の目安:当院の診療案内」
SASが心配な方、睡眠の質が良くない自覚がある方、いびきが大きいと言われる方など。
気道の状態評価、睡眠検査、診断から適切な治療への流れをワンストップで対応しています。
◆ 問題となるのは「強い眠気を自覚しながら運転すること」
今回の事故で問題となったのは、「SASという病気」そのものではありません。
報道では、CPAP治療が指示されていたにもかかわらず事故前日に使用していなかったことや、「いつ居眠りをするか分からない状態で運転した」といった供述が伝えられています。
このように、強い眠気を自覚しながら運転することは、重大な事故につながる危険があります。
これはSASに限らず、睡眠不足や過労などによる眠気でも同様です。
もう一つ、慢性的に日中の眠気がある場合、「悪い意味で慣れてしまっている」ことで眠気として自覚していないケースがある、という点にも注意です。
◆ CPAPは「いびきの治療」だけではありません
「いびきが減ったから、たまには使わなくても大丈夫。」
そのように考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、CPAP治療の目的は、いびきを改善することだけではありません。
睡眠中の無呼吸を改善することで、
日中の眠気を軽減する
集中力や判断力を保つ
高血圧や心筋梗塞、脳卒中などのリスクを減らす
居眠り運転や交通事故のリスクを減らす
という大切な役割があります。
つまり、CPAPは毎日の生活や仕事、そして運転の安全を支える治療でもあるのです。
◆ CPAP治療は交通事故リスクの低減にもつながります
海外のメタ解析では、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者さんは、交通事故を起こすリスクが健常者の約2.4倍になることが報告されています。
一方、CPAP治療を継続した患者さんでは、交通事故リスクが約70%低下したことも報告されています。
🚗 CPAP治療前 | 😴 CPAP治療後 |
交通事故リスク 約2.4倍 | 交通事故リスク 約70%低下 |
つまり、CPAPは単に「いびきを改善する治療」ではありません。日中の眠気を改善し、ご自身だけでなく、ご家族や周囲の方の安全を守るための治療でもあるのです。
参考文献
Tregear S, Reston J, Schoelles K, Phillips B. Obstructive Sleep Apnea and Risk of Motor Vehicle Crash: Systematic Review and Meta-analysis. J Clin Sleep Med. 2009;5(6):573-581.
Tregear S, Reston J, Schoelles K, Phillips B. Continuous Positive Airway Pressure Reduces Risk of Motor Vehicle Crash among Drivers with Obstructive Sleep Apnea: Systematic Review and Meta-analysis. Sleep. 2010;33(10):1373-1380.

◆ CPAPは「70%・4時間」が一つの目安です
CPAP治療では、治療効果を評価する目安として、**「全体の70%以上の日数で使用し、使用した日は平均4時間以上使用すること」**が学会や保険診療でも一つの基準とされています。
ただし、この数字は最低限の目安です。
睡眠時無呼吸は、CPAPを外して眠っている間は再び起こります。そのため、就寝から起床まで、一晩を通してCPAPを使用することが理想的です。
「4時間使ったから十分」「週に数日は使わなくても大丈夫」と考えるのではなく、できるだけ毎晩・朝まで使用することが、日中の眠気の改善や交通事故のリスク低下につながります。
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◆ 安全運転のために心掛けていただきたいこと
当院では、CPAPをご使用中の患者さんに次のことをお願いしています。
CPAPはなるべく毎晩使用しましょう(少なくとも70%以上の装着率:週に5日以上)。
「今日は大丈夫」と自己判断で治療を中断しないようにしましょう。
強い眠気や睡眠不足がある日は運転を控えましょう。
運転中に眠気を感じたら、無理をせず安全な場所で休憩しましょう。
CPAPが合わない、使いづらい、眠気が改善しない場合は、早めにご相談ください。
◆ 院長から皆さまへ
今回のニュースは、「SASは危険な病気」ということを伝えたいものではありません。
むしろ、適切な治療を継続することで、防ぐことのできる事故があることを示しています。
SASは、きちんと治療を続ければ日中の眠気が改善し、多くの方が安全に仕事や運転を続けることができます。
一方で、治療を自己判断で中断したり、強い眠気を我慢して運転したりすることは、ご自身だけでなく周囲の方の命にも関わる重大な事故につながる可能性があります。
「なるべく毎晩CPAPを使うこと」と「眠い日は運転しないこと」。
この二つを守ることが、ご自身と大切な人を守ることにつながります。
「最近CPAPを十分使えていない」「眠気が残る」「運転中にヒヤッとしたことがある」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
今回の報道で私が最も気になったのは、「事故前日にCPAPを使用していなかった」という点です。CPAPは薬のように飲み忘れても翌日まで効果が続く治療ではありません。無呼吸はその夜から再発し、翌日の眠気や集中力低下につながる可能性があります。『一晩くらいなら大丈夫』と思わず、なるべく毎晩継続して使用することが何より大切です。



