当院は耳鼻咽喉科ですが、花粉症の患者さんの診察の際に「眼の痒み」についての相談を受けることも少なくありません。
もちろん、眼科ご専門の先生の診察を受けるのが理想的なのは大前提。ただ、なかなか複数科の受診が困難なケースなどで相談を受ける場面がある、という訳です。
「眼が痒い」=「点眼薬処方」が従来の対応でしたが、新たに「塗る目薬」とも言えるクリーム剤が登場したのをご存知ですか?
今回、眼科領域発であるこの薬剤について、眼科のみならず皮膚科・耳鼻咽喉科を含めた講演会が開催されたので、向学のため参加してきました。
本ブログでは、その講演会で勉強してきた内容をお伝えしようと思います(*印には私の感想・意見を書いてみました)。
●国民の40%がアレルギー性結膜炎に罹患している、という事実
*アレルギー性鼻炎が国民全体の50%、花粉症は国民の40%が罹患していることを考えれば、ほぼ同じ。
●処方された薬をキチンと使う割合(アンケート調査)
・内服 57.4%、点眼薬 28.7%、点鼻薬 16.0%
*内服薬に比べて点眼薬・点鼻薬の用法順守率がこれだけ低いとは想像していなかったので、ビックリしました。個人的には、点眼よりも点鼻の出番が少ないことに驚きでした・・・。
●点眼薬(1日4回タイプと2回タイプ)をキチンと使う割合(アンケート調査)
眼の痒みが抑えられた状態を続けるためには、症状が出る前から定期的な点眼薬使用(プロアクティブ点眼といいます)が望ましいとのこと(継続使用することでアレルギー反応の発現レベルが低下すると言われています:皮膚科・耳鼻咽喉科領域でも推奨)ですが、実際のアンケートでは、
「定期的に点眼する割合」は1日4回タイプ:32.8%、1日2回タイプ:59.7%
点眼薬を使うタイミングは「眼の痒みを感じた時のみ使う」人が一番多い、という結果でした。
*その他の意見として、アンケートには「眼の周囲に液が溢れるのが不快(メイクが乱れる)」「複数回使用が面倒」という意見が多数寄せられたそうです。メイクをしない私には想像できなかった意見、参考になりました。
●特に痒い場所・時間帯は?
・痒い場所 1位:目頭 71.2%、2位:瞼の縁 51.8%
*点眼薬が届きにくい場所が痒くなりやすい、ということでしょうか?そういえば、擦りすぎて眼の周囲まで荒れてしまうしまうケースが多いですね。
・痒い時間 1位:起床時 55.9%、2位:午後 54.4%、3位:就寝前 51.3%、4位:午後 46.9%
*1日2回の点眼薬でも8時間程で効果発現に必要な有効濃度を下回るので、睡眠中に域値を下回れば起床時に調子が悪い(※モーニングアタック)のも頷けます。
参考)※モーニングアタック:早朝~起床時の副交感神経優位から交感神経優位への移行期における自律神経の乱れが関与して、結果として粘膜の過敏性が影響を受けて症状が悪化する現象。
●今回紹介された眼瞼クリーム(眼瞼=まぶた)
眼瞼皮膚経由+涙液への移行で眼瞼結膜・眼球に有効成分が到達し、24時間後でも有効濃度が維持されていた→1日1回でOK & モーニングアタックが減少
・500ダルトンルール(角層のバリア機能で500ダルトン<微小な粒子に用いられる単位>よりも大きな分子は表皮・真皮まで到達しない、というルール)がある一方、今回紹介された眼瞼クリームの分子の大きさは285.78ダルトン→十分に皮下組織まで到達する
・1日1回、就寝前に洗顔~化粧水・乳液などを使用した後でクリームを塗布→翌朝のメイクも普通にOK

以上、講演会レポートをお届けしました。
私個人としては何だかとてもよさそうな印象を持ちましたが、皆さんはいかがでしょう?
眼の痒みに悩まされている方、一度検討してみる価値はありそうですね。
かかりつけの眼科主治医先生、もしくは必要あれば次回の当院受診時にご相談下さいませ。
以上、画期的な眼瞼クリームの講演会レポートでした。
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